結論から言うと、会社員でも、AIスクールや資格の費用を所得から差し引ける制度があります。
給与所得者の「特定支出控除」です。
ただし、使えるのは特定支出の合計が給与所得控除額の2分の1を超えた部分だけです。
さらに、仕事に直接必要であることを、会社などに証明してもらう必要があります。
出典:No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁(2026年10月25日確認・令和8年4月1日現在法令等)
この記事では、対象になりうる費用と条件、手続きの流れを整理します。
個人事業主の場合の考え方は、「AIスクール代は経費にできる?個人事業主が知っておきたいポイント」で紹介しています。
特定支出控除とは
会社員の給与所得は、給与の収入金額から「給与所得控除」を差し引いて計算します。
特定支出控除は、それとは別に、仕事のための一定の支出を差し引ける制度です。
出典:No.1410 給与所得控除|国税庁(2026年10月25日確認)
対象になる支出は、通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・勤務必要経費の7つです。
出典:No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁(2026年10月25日確認)
AIスクール・資格の費用が入りうる2つの区分
| 区分 | 国税庁の説明 |
|---|---|
| 研修費 | 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出 |
| 資格取得費 | 職務に直接必要な資格を取得するための支出 |
出典:同上
AIスクールの受講料は研修費、資格の取得にかかる費用は資格取得費に当たる可能性があります。
ただし、どちらも「職務に直接必要」であることが前提です。
今の仕事と関係のない学び直しは、対象にならない場合があります。
使えるのは給与所得控除の2分の1を超える部分だけ
特定支出の合計額が、給与所得控除額の2分の1を超えたときに、超えた部分だけを差し引けます。
給与所得控除額は、給与の収入金額で決まります。
| 給与の収入金額 | 給与所得控除額 | その2分の1(これを超えた部分が対象) |
|---|---|---|
| 300万円 | 98万円 | 49万円 |
| 400万円 | 124万円 | 62万円 |
| 500万円 | 144万円 | 72万円 |
| 600万円 | 164万円 | 82万円 |
出典:No.1410 給与所得控除|国税庁(2026年10月25日確認。令和8年分・令和9年分の計算式で算出)
たとえば給与の収入が500万円の人は、特定支出の合計が72万円を超えないと控除を受けられません。
スクール代だけでこの額を超えるかを、先に確かめましょう。
会社またはキャリアコンサルタントの証明が必要
特定支出は、職務に直接必要であることの証明を受けたものに限られます。
| 証明する人 | 対象 |
|---|---|
| 給与の支払者(勤務先) | 7つの特定支出のすべて |
| キャリアコンサルタント | 令和5年分以後の研修費・資格取得費のうち、教育訓練に係る部分 |
出典:No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁(2026年10月25日確認)
厚生労働省によると、キャリアコンサルタントの証明は、教育訓練給付の指定講座を受講した場合の特例です。
勤務先の証明に代えて、国家資格のキャリアコンサルタントの証明を受けられます。
出典:特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について|厚生労働省(2026年10月25日確認)
受講する講座が指定講座かどうかは、「教育訓練給付金・補助金が使えるAIスクールはどれ?」で見分け方を紹介しています。
特定支出に含まれない部分
次の部分は、支払った額から除いて計算します。
- 勤務先から補てんされた部分:補てんされた部分に所得税がかかっていない場合
- 教育訓練給付金が支給される部分:雇用保険法による教育訓練給付金など
出典:No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁(2026年10月25日確認)
教育訓練給付金を受け取った場合は、給付金を差し引いた自己負担の額で考えます。
給付金の手続きは、「教育訓練給付金の申請方法」で整理しています。
手続きの流れ
- 費用の領収書を保管する:スクールの受講料や受験料など、支払ったことを示す書類を残します。
- 証明書を受け取る:勤務先、またはキャリアコンサルタントに証明を依頼します。
- 明細書を作る:「給与所得者の特定支出に関する明細書」に支出を書き出します。
- 確定申告をする:明細書と証明書を申告書に添付し、所轄の税務署へ申告します。
出典:同上
特定支出控除を受けるには、確定申告が必要です。
支出の事実と金額を示す書類は、申告書に添付するか、提出するときに提示します。
明細書と、勤務先の証明用の証明書の様式は、国税庁のサイトに載っています。
キャリアコンサルタントの証明を受ける流れ
厚生労働省は、次の手順を案内しています。
- ジョブ・カードを作る:キャリア・プランシートと職務経歴シートを作成します。
- キャリアコンサルティングを受ける:対面またはオンラインで受けます。
- 証明依頼書を出す:今の職務と、受講した講座との関連を書いた「特定支出に関する証明依頼書」を提出します。
- 証明書を受け取り、確定申告をする:交付された証明書を、明細書・領収書とともに申告書に添付します。
出典:特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について|厚生労働省(2026年10月25日確認)
依頼するときは、本人確認書類・ジョブ・カード・証明依頼書・講座情報のコピーが必要です。
依頼先は、最寄りの「キャリア形成・リスキリング相談コーナー」です。
民間企業やフリーランスのキャリアコンサルタントに依頼することもできます。
専門実践・特定一般の教育訓練給付を使う場合は、受講前のキャリアコンサルティングとあわせて手続きできるとされています。
つまづきポイント
-
スクール代だけで超えると思い込む:給与所得控除額の2分の1は、収入500万円で72万円です。支出の合計がこれを超えるかを先に確かめましょう。
-
年末調整で済ませようとする:特定支出控除は確定申告で受けます。勤務先の年末調整だけでは受けられません。
-
証明を後回しにする:勤務先の証明が無いと対象になりません。受講の前に、証明してもらえるかを確かめておくと安心です。
-
給付金の分を含めて計算する:教育訓練給付金が支給される部分は、特定支出に含まれません。
まとめ
会社員でも、仕事に直接必要なAIスクールや資格の費用は、特定支出控除の対象になる可能性があります。
使えるのは、特定支出の合計が給与所得控除額の2分の1を超えた部分だけです。
勤務先かキャリアコンサルタントの証明を受け、確定申告で手続きします。
税の扱いは個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は所轄の税務署や税理士に相談してください。
制度の内容は変わる場合があるため、申告の前に国税庁の最新の案内を確認しましょう。